金属蛋白質の機能発現において金属イオンの取り込みは翻訳後修飾における最も重要なステップである。近年、ターゲット蛋白質へと銅イオンを挿入するCopper-chaperonのX線結晶構造解析がなされるなど、金属イオンの取り込み及び放出のメカニズムが研究されつつあるが、反応機構について検討された例はない。本研究では、ブルー銅蛋白質シュウドアズリンへの金属イオン取り込み及び放出過程に関する知見を得るため、種々の金属イオンで置換した金属置換シュウドアズリンの構造について紫外共鳴ラマンスペクトルを中心に検討した。銅イオンを亜鉛イオンに置換したシュウドアズリンの紫外共鳴ラマンスペクトルは、中性付近において亜鉛イオンに結合したヒスチジンイミダゾールに由来するラマンバンドを1388cm^<-1>に与えた。このラマンバンドは酸性条件下では消滅し、プロリン由来のラマンバンドが、アポシュウドアズリンのラマンバンドと同様の変化を示すことを見出した。これらのことより、銅イオンは極めて特異的に結合しているものと考えられる。 シュウドアズリンの配位ヒスチジンの近傍に存在する16位のメチオニン残基をフェニルアラニンへと置換した部位特異的突然変異体を作成し、その金属イオン結合能についての検討を行った。この結果、シダ植物由来のプラストシアニンと同様、フェニルアラニン残基が配位ヒスチジン残基と芳香間相互作用をし、ヒスチジンと銅イオン間の結合が強められることを見いだした。本結果は、金属イオンの第二配位圏での相互作用が、金属イオンの結合、つまり、金属イオンの認識に重要な役割を果たすと結論づけられた。
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