研究概要 |
Pt(II)錯体の結晶多形での会合様式の差異と2種の異なる発光をもたらす要因について、[Pt(II)(dpphen)(CN)_2](dpphen=4,7-diphenylphenanthroline)化合物について実験および理論の両面から研究をおこなった。 1.錯体の結晶構造解析と励起状態ダイナミックスの解明 2種の結晶形(針状と板状晶)が得られ、それぞれX線構造解析をおこない構造と発光挙動の関連性について研究した。針状結晶は配位子に局在した^3LC発光を示すが、板状結晶は高濃度溶液で観測されるエキシマー様の発光を示す。結晶構造は、どちらも平面構造がスタックしているが、いわゆるPt-Pt結合や芳香環の重なりのある会合体構造ではなく、Pt-芳香環、芳香環-CN基の相互作用が重要であると考えられた。会合体と思われる発光のダイナミックスは結晶析出溶媒により、かなり異なることがわかった。発光収量や寿命、分光学的特性など測定したがエキシマー様発光の素性を特定する事は出来なかった。また新たな準安定結晶相を見出した。 2.電子構造計算による解明 ジイミノ白金錯体の会合をもたらすd-d, d-π^*、あるいは配位子間結合の本質を解明するため、密度汎関数法による計算を試みた。得られた最適化構造は結晶構造をよく再現できた。単分子錯体の最低励起状態は三重項MLCTと^3LCの混合状態であり、^3LC性の高いものと低いものが近接して複雑である。そこで会合や分子の存在環境によってどのように状態エネルギーが変化するかを考察するため、分子周りの誘電率を変化させて量子化学計算を実行したところ、最低励起状態の^3MLCTの寄与が周囲の誘電率が低いときに顕著になるという結果を得た。これは会合・集積に伴う電荷移動構造の増加を示唆しており、実験結果を説明する糸口が開けたものと考えられる。
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