研究概要 |
本研究は、3d-4f混合金属多核錯体の合理的合成法の確立と系統的物性評価を目的とする。平成13-14年度の2年間での主な成果を以下に挙げる。 1.合成:配位子1,1'-(2,6-pyridylene)-bis(1,3-butanedione)(H_2L)を用いて、イオン半径差を利用した一段階反応による一連のM^<II>-Ln^<III>-M^<II>型三核錯体[M_2Ln(L)_2(NO_3)_3](M^<II>=Mn, Fe,Co,Ni,Cu,Zn;Ln^<III>=La,Ce,...Yb,Lu)の合成に成功した。化合物のうち約8割について、構造決定及び磁気測定が完了した。 2.構造:単結晶X線構造解析より、どの金属イオンの組み合わせにおいても、2つ配位子(L)^<2->が両端のβ-diketoneサイトで2つのM^<II>を、中心の2,6-diacylpyridineサイトでLn^<III>を挟み込んだ直線三核構造の形成を確認した。M=Cuの場合は、2つの配位子の成す面角はほぼゼロであり、中心Ln^<III>はイオン半径の増加に応じて基底平面より浮き上がっていた。一方M=Ni, Co,Znでは、M-Ln-Mは常に直線配置となっており、中心Ln^<III>のイオン半径の減少とともに配位子間の振れが増大した。 3.磁性:磁気測定においては、M-Ln間(Ln=軽希土類)に反強磁性的相互作用が観測された。また、Ln=Gd,Tb,Dyでは強磁性的相互作用が確認されたが、その他の重希土類では大きなスピン-軌道相互作用により、反強磁性的寄与が支配的であった。 4.三元金属磁性系への展開:上記三核錯体と[Cr(CN)_6]^<3->との反応から、三元金属集積型錯体[M_2Ln(L)_2][Cr(CN)_6]・nH_2Oを得た。M=Cuでは一次元鎖状、Niでは二次元シート、Coでは三次元ネットワークを形成しており、Ni,Coでは磁気秩序を達成した。さらにCoの系では、中心Lnの種類により、フェロ、フェリ、メタ磁性の作り分けに成功した。
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