研究概要 |
トリス(2,2'-ビピリジン)ロジウム(III)錯体[Rb(bpy)_3]^<3+>を(+)_<589^->トリス[L-ムシスチンスルフィナト(2-)-SN]コバルト(III)酸錯体(+)_<589>[Co(L-cysu)_3]^<3->を用いて光学分割し、得られたΛ(+)_<405>[Rhl(bpy)_3]^<3+>錯体の塩化物と1-ナフタレンスルホン酸銀(Ag1-NS)との複分解により目的塩Λ(+)_<405>[Rh(bpy)_3](1-NS)_3を合成した。このΛ錯体の塩の水溶液はラセミ錯体の場合と同様、室温において特定の組成領域で二液相に分離することがわかり、錯体-水の混合組成と二相分離する温度(曇点)の関係を調べその相図を作成した。その結果、臨界共溶温度T_cが67℃(無水塩が約29wt%の組成のとき)にあることが明らかになった。この温度はラセミ錯体の場合に比べ約7℃低く、また、濃厚溶液相の水の溶解度も増大していることが分った。これは相分離現象に錯体間相互作用が関与しており、また、錯体と1-ナフタレンスルホン酸イオンの1対3会合体が形成されても光学活性錯体の場合には自己集合能力が相対的に低いことを示唆している。ラセミ錯体の2-ナフタレンスルホン酸塩の場合と比較すると、Λ錯体の1-ナフタレンスルホン酸塩のT_cは約4℃高いにもかかわらず、濃厚溶液相の水の溶解度は同等以上であった。これは、1-ナフタレンスルホン酸塩の方が2-ナフタレンスルホン酸塩より疎水性が大きく、より安定な錯体と陰イオンの1対3会合体を形成することによりT_cが高くなるが、光学活性錯体の自己集合能力が相対的に弱いため、より多くの水が溶解できることによると考えることができる。
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