研究概要 |
21世紀の化学に要求される研究課題の一つとして、「自然環境のサイクルを乱さない、安全で効率のよい物質・エネルギー変換の開発」が考えられる。本研究は有機溶媒を使わないことから「環境調和型の化学」と位置づけることができる。そして、均一触媒反応の観点からは、プロトンに囲まれた環境の中でヒドリド錯体を安定に生成させ、なおかつケトン、アルケンなどの有機化合物や、硝酸イオンなどの無機化合物の還元を進行させようというチャレンジングな課題である。また、本研究は申請者の独創的な発想に基づくものであり、国内外において類似の研究はなく、新しい分野を開拓するものである。これまで国内外においてヒドリド錯体を用いた水中での触媒的還元反応の例はほとんど知られていなかった。なぜなら,通常還元反応を触媒する活性なヒドリド錯体は水及び酸に不安定なものが多いからである。本申請研究では,「水中酸性条件下で安定なイリジウムヒドリド錯体の合成・X線構造解析」、「水中酸性条件下で安定なルテニウムヒドリド錯体の合成・X線構造解析」、「水中酸性条件下でヒドリド錯体を触媒としギ酸イオンや水素を還元剤とするカルボニル化合物の触媒的還元反応」、「水中酸性条件下でヒドリド錯体を電子源とする硝酸イオンの還元反応」に成功した。現在,これらの研究成果を基に「水中でヒドリド錯体を触媒とする二酸化炭素・窒素分子の触媒的還元反応の開発」を進めている。
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