研究概要 |
本研究の目的は、コア分子を化学修飾し柱状液晶相を発現させ、ポリマー化した後にコア分子を除去し、フラーレンC60などを認識する細孔を形成することにある。 まず、計画書に書かれているとおり、ヘキサヒドロキシトリフェニレンを、コア分子として用いたが、酸素と反応して不安定であり、CH3(CH2)6CH=CH-COClでエステル化を試みたが、この時点でポリマー化し、液晶分子の合成にはいたらなかった。次に、コア分子として、β-シクロデキストリンの6位のOHをシリル保護した後、2,3位のOHにCH3(CH2)6CH=CH-COClでエステル化を試みたが、やはりポリマー化が進行し、モノマーは合成できなかった。エステル化の際にポリマー化が進行してしまうので、エステル結合などの化学結合でなく、水素結合やイオン結合で、超分子を形成させて液晶化を行っている。具体的には、コアとして、2,2'-ジピリジル、メラミン、エチレンジアミンを用い、HOOC-C6H2(OCH2CH=CH2)3と超分子を形成させ、液晶性を調査している。現時点では、液晶状態は達成されていないが、コアを除去する段階が容易になるので、来年度も超分子でのナノチューブ作成を中心に続けていく予定である。 また、より細い細孔の作成として、(RO)3C6H2-CO-O-CO-C6H2(OR)3の液晶化とポリマー化も進めており、R=C6H13, C8H17, C10H21, C12H25, C14H29の化合物において、液晶状態を発現することに成功した。さらに、X線回折を用いた詳細な調査により、半円盤状の本化合物が段違い平行に積み重なりカラムを形成すること、このカラムがカラム間で噛み合っていること、そして、Rとして光学活性なアルキル基を導入したところ螺旋状の組織が構築されたこと、などの新しい知見を得た。この成果は、J.Am.Chem.Soc.2002,124、597-1605に掲載され、Science 2002,295,1428のハイライトとして紹介された。この化合物についても、側鎖に2重結合を導入し、ポリマー化を計画している。
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