研究概要 |
ウミホタルなどの生物発光基質の基本骨格として重要なイミダゾピラジノン環構造の基本物性を確立し、生物・化学発光機構およびソルバトクロミズム性等の特異な物性発現機構の解明とその応用をめざして研究を行った。まず、イミダゾピラジノン構造の物性に及ぼす置換基効果を確立するため、6,8位にフェニル基を系統的に導入した2-フェニルイミダゾピラジノン誘導体を合成し、分光学的性質を検討した。この結果、6位へのフェニル置換体が無置換体類似の性質を示すのに対し、8位のフェニル置換は吸収波長の大きな長波長シフト(ca.40nm)と蛍光性の低下を誘起することがわかった。また、いずれの誘導体も無置換体同様の水素結合形成に起因するソルバトクロミズム性を示し、反芳香族1,4-ジヒドロピラジン環を含む基本構造の物性を維持することが明らかとなった。よって、これらの誘導体をソルバトクロミズム性に基づく溶媒の水素結合供与性指示薬として応用する際の色調の拡大(黄色から紫)に成功した。さらにイオン・分子認識性発現に関する基本的な知見を得た。イオン認識では、イミダゾピラジノン誘導体と金属イオン(L^+,Mg^<2+>など)との錯体形成を分光学的に確認し、錯体の分光学的性質がプロトン化類似の結合形成に起因することを見出した。特に、錯体の結合力はイオンのルイス酸性度に応じて変化し、吸収波長、蛍光波長、錯生成定数が連続的に変化した。よってイミダゾピラジノン誘導体がルイス酸性度指示薬として有用であることが明らかとなった。分子認識では、イミダゾピラジノン誘導体と生体分子(BSA, DNAなど)との相互作用に関する基礎実験を行った。この結果、イミダゾピラジノン誘導体は分極した共鳴構造を持つために生体分子との相互作用性が弱く、分子設計上、疎水性の芳香環を連結することで分子認識性を付与できることが明らかとなった。
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