研究概要 |
オワンクラゲやウミホタルなどの生物発光基質の基本骨格として重要なイミダゾピラジノン環構造の基本物性を確立し、生物・化学発光機構およびソルバトクロミズム性等の特異な物性発現機構の解明とその応用をめざして研究を行った。(1)まずπ電子系の基本物性を確立するため、母骨格の性質を維持した誘導体を用いて各種条件下での分光学的性質を詳細に調べた結果、イミダゾピラジノン誘導体の長波長吸収性は、大きく分極したπ電子系構造に起因することがわかり、ソルバトクロミズム特性は酸素原子部位での溶媒分子との水素結合形成に起因することが明らかとなった。また、プロトン化、脱プロトン化に伴う物性変化を確立した。7-メチル誘導体についてはX線結晶構造解析に成功し、環部分が平面構造であり、結晶内では分子間πスタック構造を作ることがわかった。測定結果と分子軌道計算結果と比較することで、イミダゾピラジノン環の構造的特徴が8π電子系反芳香族1,4-ジヒドロピラジン環を含む特異な環構造に起因することがわかった。(2)次にイミダゾピラジノン構造の物性に及ぼす置換基効果を調べるため、6,8位にフェニル基を系統的に導入した誘導体を合成し、分光学的性質を検討した。この結果、6位よりも8位への置換基導入が吸収挙動と蛍光性の大きな変化を誘起することがわかった。いずれの誘導体もソルバトクロミズム性を示し、基本構造の物性を維持することがわかり、併せてソルバトクロミズムの色調拡大に成功した。(3)イオン認識性に関する知見として、イミダゾピラジノン誘導体と金属イオン(L^+,Mg^<2+>など)との錯体形成によって環の分光学的性質が大きく変化することを見出した。錯体の結合力はイオンのルイス酸性度に応じて変化し、吸収波長、蛍光波長、錯生成定数も連続的に変化した。よってイミダゾピラジノン誘導体がルイス酸性度指示薬として有用であることが明らかとなった。
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