1 2成分系相図の研究(熱分析) (1)トリプチセンキノン(TPQ)-トリプチセンヒドロキノン(TPHQ)二成分系は、TPQのモル比が約0.8以上の領域では固溶体を形成することを今回熱力学的に確認した。TPQメチル誘導体の熱分析を行った。ビスヒドロキシメチルトリプチセン(bisCH_2OH-TP)の相転移を発見した。 (2)パラ置換ベンジルアルコール(塩素体(pCBA)、臭素体(pBBA)、メチル体(pMBA)、よう素体(pIBA)、ニトロ体(pNBA)等)の二成分系を研究した。pCBA-pMBA系はpMBA<20モル%領域では混晶、pIBAはpCBAにpMBAと同程度固溶する、pCBA-pBBAは連続混晶を形成する、pMBA-pNBAの固融領域は極めて狭い、等の事実が分かった。混晶の転移挙動は、置換基の局所的な立体効果に支配される傾向がある。これら混晶系の溶融法による単結晶育成は一般に困難であった。純pMBAの極微小な転移熱を決定し、純pBBAの昇華結晶の極めて興味ある転移挙動を見出した。 (3)本研究計画で購入したマック・サイエンス社製MAC-DSC-3100Sを用いて熱分析実験を行い、相図作成に関する技術情報(装置特性、感度、試料の量、加熱速度、サーモグラムの解析法等)を獲得できた。 2 結晶構造解析 (1)チエノアズレン、ベンズアズレン、ベンゾチエノアズレン等のアズレン系化合物の構造を精密に再解析した。アズレン骨格の平面性と結晶中における分子面の近接平行配列を確認し、パイ系の分子間相互作用が結晶の色と関連している可能性を見出した。 (2)bisCH_20H-TP結晶中の4員環形水素結合を見出した。この結晶にモノヒドロキシ体をドープし、水酸基の欠如した局所的欠陥構造を導入すると興味ある誘電性質が期待される。 (3)pCBA : pIBA(0.85 : 0.15)結晶の構造を決定し、混晶であることを確認した。
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