研究概要 |
本研究は三重結合を含む新規な4-(2-ペルフロロ(C_mH_<2m+1>)アルキルエトキシ)ベンゼン化合物(1)、2-ペルフロロアルキルエチル(C_mH_<2m+1>)4-アルコキシ(C_nH_<2n+1>)フェニルアセチレンカルボン酸(2)の合成と液晶材料,光機能材料への応用を目的とした.1(m=8)の内,1位にアルコキシ鎖を有する同族体を10種類合成した.その内,メトキシ,エトキシ同族体はスメクチックA相を発現したが更に長鎖同族体は液晶相を示さなかった.しかし,1(m=10)同族体ではメトキシ同族体はスメクチックA相を発現し、オクチルオキシ同族体以降ではスメクチックB相の発現が見られた.以前に私たちが報告したアルキル4-(2ペルフロロアルキルエトキシ)安息香酸に比べると液晶性,特にスメクチックA相の発現が困難である.その理由として化合物2の様なエステル基に由来する極性が化合物1では無いことが原因と考えられる.そこで,エステル基を含む化合物2の合成を行った.2(m=8)同族体は3種類(n=8.10)合成した.これらの同族体は何れもモノトロピック状態でスメクチックA相を発現した. これらの同族体のキセノンランプを用いて光反応性を検討した.しかし,溶液状態,バルクスメクチックA,結晶状態何れの場合にも,化合物2は光に対し安定であり,光反応生成物は得られなかった.そこで,2-プロピニル4-(2-ペルフロロオクチルエトキシ-3-ニトロ安息香酸(3)を新規に合成した.この化合物はスメクチックA相と思われる液晶相を示した.この化合物も,光に対し,安定でありキセノンランプ光照射により,光反応生成物を与えることはなかった.この結果から,ペルフロロ炭素鎖部分が液晶状態で特異な分子配列状態を形成し,分子間の光反応を阻害する可能性が指摘出来る. そこで,更に,分子末端のフロロアルキル基の液晶分子配列に対する効果を検討する目的で,液晶核末端にペルフロロアルキル基を有する新規液晶材料の開発を行った. その結果,液晶核末端のペルフロロ炭素鎖は親フッ素効果によりフロロ炭素鎖部分がミクロ相分離を起こし,スメクチックA相で特異な層構造を取ることを見いだした.又,液晶核末端部分に付与したトリフロロメチル化合物においても,スメクチックA相において,類似の層構造を形成することが明らかとなった.
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