本研究では、外部刺激応答イオン素子のモデルとして、長時間溶液pH状態を記憶するイオン素子の作製条件を検討した。そのため、まずポリビニルアルコールに2mol%のイタコン酸を共重合組成として含むポリマーをキャスト製膜し、160℃で熱処理後、グルタルアルデヒドで架橋することで、pH記憶応答性イオン素子を作製した。そのイオン素子をpH13、またはpH2の処理溶液に浸漬後、pH5.5のKCl溶液に保存しながら、所定時間毎にKCl溶液を用いることで膜電位を測定した。そして膜電位のデータより、イオン素子の荷電密度を算出した。その結果、このイオン素子は高pH処理(PH13)を行うと荷電密度が0.3mol/dm3以上と高い値を示し、低pH処理(pH2)を行うと荷電密度が0.03mol/dm3以下と低い値になった。そしてこのイオン素子は荷電密度変化をpH5.5の塩溶液中においても400時間以上、保持可能であることが判明した。イオン素子のイオン輸送ベクトルは荷電密度と関係があることが我々のコンピュータシミュレーション結果より予測されているため、このイオン素子を用いて、KCl、CaCl_2混合電解質系におけるCa2+イオンのイオン輸送ベクトルをpH記憶状態で制御可能であることが示唆された。
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