ピリドイミダゾピラジノフェナントロリン(PIPPh)の合成法について、昨年に引き続いて検討を行った。しかし、収率の向上は達成できなかった。 得られたPIPPhの光学特性を検討した。アセトニトリル中で吸収波長(λmax)は440nmであり、最大吸収波長(270nm)を励起したときの蛍光は465nmに観測された。 次に、PIPPhに金属カチオンを添加したときの光学特性の変化について詳細に検討を行った。Zn^<2+>、Cu^<2+>、Cd^<2+>、Fe^<3+>、Ni^<2+>、Ag^+、Mg^<2+>、Ca^<2+>の金属カチオンを添加して吸収スペクトルを測定したところ非常に複雑なスペクトルを示した。これは、PIPPhに複数の金属配位部位が存在することを示唆している。 PIPPhの類縁体であるピリドイミダゾピラジン(PIQ)、およびピリドイミダゾピラジン(PIP)、クラウンエーテル認識部位を有するPIP-crownについても金属カチオンを添加した時の挙動について検討を行った。PIQにZn^<2+>、Cu^<2+>、Fe^<3+>を添加したところ短波長に新たな吸収が見られた。一方、Na^+、Mg^<2+>では変化が見られなかった。PIP、PIP-Crownでは遷移金属を全く認識せず、PIP-Crownでは既に明らかにしたようにアルカリ金属、アルカリ土類金属を認識した。 このように、PIPPhはフェナントロリン部位と、イミダゾピラジン部位の2カ所でアルカリ土類金属と遷移金属を認識することが明らかとなった。しかし、金属種の差によって蛍光特性をコントロールすることは困難であることが判明した。今後は、アルカリ金属類を認識するクラウンエーテル部位を有する素子の構築を検討する。
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