複数のゲスト分子の存在を認識して、論理的な演算結果を光信号として出力するホスト分子の検討を行った。 フルオロファー部位としてはピリオイミダゾピラジノフェナントロリン(PIPPh)骨格を新規に合成して、遷移金属認識能について明らかにしてきた。その結果、遷移金属を添加すると紫外-可視吸収スペクトルが複雑に変化し解析が困難であることが明らかになった。 次にアルカリ土類金属の論理的認識素子として既に報告した、ピリドイミダゾピラジン(PIP)ホストの遷移金属認識能について検討したが、遷移金属と錯形成をしないことが判った。ピリドイミダゾキノキサリン(PIQ)骨格に遷移金属を添加するとイミダゾピラジン部位で金属を認識して吸収スペクトルに変化を及ぼすことが判った。添加するゲスト濃度を変化させると、亜鉛の場合には等吸収点が見られ、単純な錯体を形成していることが予想された。また添加するカチオンによっても異なった挙動を示し遷移金属カチオンを認識していることが明らかとなった。 アルカリ・アルカリ土類金属を認識する部位としてクラウンエーテル側鎖を導入したPIQ-12Crown4を新規に合成した。アルカリ金属・アルカリ土類金属のチオシアン酸塩、過塩素酸塩を添加すると吸収スペクトルは変化をしなかったが、アルカリ土類金属のチオシアン酸塩を添加した場合のみ蛍光の消光が観測された。この挙動はピリドイミダゾピラジン(PIP)にクラウンエーテル側鎖を導入したものと同様のNANDロジックの認識を示した。 遷移金属カチオンとアルカリ土類金属カチオンを同時に添加すると、両者を別々に添加したときの挙動が組み合わされ複雑な論理回路を形成することが出来た。その回路は取り出す出力信号(紫外-可視吸収スペクトル、蛍光スペクトル)によっても異なっており、複数の入力信号(添加する金属塩)に対して様々なロジックを発現することができた。
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