研究概要 |
超伝導特性や強磁性的挙動に代表される特異なフラーレン物性に関して、その担い手と考えられるフラーレンアニオンラジカルを分子性結晶として捕捉するため、液相電解結晶成長法を手法として用いて、嵩高い安定化カチオンによって極めて不安定なフラーレンアニオンラジカル種を単離し、その物性に関して、とくに電気伝導特性について検討することが本研究課題の目的である。平成14年度は、顕微赤外分光装置によってアニオンラジカル塩結晶の結合性格に関して検討するため、(Brilliant Green)(C_<60>)塩など、色素カチオンを安定化配位子とするアニオンラジカル塩およびM(THF)_6(C_<60>)_2(M=Li, Na, K)について結晶成長を様々な条件で繰り返し試みた。比較的高品位なフラーレンアニオンラジカル塩単結晶を得ることはかなり困難であるが、(Brilliant Green)(C_<60>)塩についてはX線単結晶構造解析から結晶構造を昨年度明らかにしている。C_<60>^-の伸縮振動はC_<60>骨格伸縮振動モードに対してどのような変化をもたらすかについて検討した。また、すでに予備的な構造が明らかになっているM(THF)_6(C_<60>)_2については、特異的な電荷状態((C_<60>)2^-)にあることから、C_<60>骨格伸縮振動モードへの影響についても興味深い。その結果、C_<60>骨格伸縮振動モードである4本のT_u(527,576,1183,1429cm^<-1>)のうち、527,576,1183cm^<-1>については全く変化しないか、ほとんどシフトが観測されなかったにもかかわらず、1429cm^<-1>は大きくシフト(ないしは消失)していた。Jahn-Tellerゆがみとの関連を議論するためには、より詳細な結晶構造解析が望まれる。さらにフラーレンアニオンと有機伝導体や金属錯体との相互作用による結晶成長に関しても検討を進めた。
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