研究概要 |
本研究は、DNA-分子内の2重螺旋を結びつけている各塩基分子対サイトの状態密度のエネルギー準位スペクトルをトンネル顕微鏡を用いて測定し、分子内の電荷移動速度の塩基対依存性を検証し明らかにすることを目的としている。そこで,本年度は二種類の典型的な塩基配列をもつ2重螺旋DNAとして、poly(dA-dT)・poly(dA-dT)とpoly(dG-dC)・poly(dG-dC)をそれぞれ(A-T)対および(G-C)対DNA試料としてとりあげ、トンネル顕微鏡を用いてそれぞれのSTM像の観察および各塩基サイトの2次元空間分解STS測定を行った。その結果を比較すると、(A-T)対では高エネルギー位(フェルミ準位から測って+2eV付近)に状態密度のピークが存在するが、(G-C)対では比較的低エネルギー位(+0.5eV付近)にもピークが存在することが見出された。特に、後者における価電子帯での低エネルギー位のピークの存在は、(G-C)対での正孔の非干渉性ホッピング移動を容易にすると考えられるので、(G-C)対を含む系における電荷の長距離移動を可能にする機構がある程度検証されたと考えられる。
|