現在、臨床現場において広く用いられている磁気共鳴イメージング(MRI)用ガドリニウム系造影剤に、組織や細胞(例えば腫瘍細胞)特異性の機能を付加することを目的として、初年度(平成13年度)は、サリチルアルデヒド誘導体とジエチレントリアミンとの縮合をおこなった。得られた配位子のイミン部分とアミン部分の反応性の違いを利用して3価の陰イオンとなるように酢酸基の導入をおこなったが、反応の再現性、収率に問題があっため、本年度は、サリチルアルデヒド誘導体のフェノール水酸基の保護基と、アミン部分への酢酸基の導入条件の検討をおこなった。その結果、フェノールの保護基としては、メトキシメチル基を用い、酢酸基はエステルで導入した後、加水分解により酢酸基とする合成経路を新たに開発することができた。これらの配位子の構造を調べるため亜鉛およびニッケル錯体の結晶化を行っているが、X線結晶解析に良好な単結晶は今のところ得られていない。また、ガドリニウム錯体については、構造決定および緩和時間測定を行なっているところである。さらに、水溶性を増すため芳香環部分にポリオキシエチレン鎖を導入したサリチルアルデヒド誘導体とトリス(2-アミノエチル)アミンとの縮合により得られたシッフ塩基のガドリニウム錯体の緩和時間についても現在検討中である。 一方、細胞膜表面の糖鎖との結合サイトとしてホウ酸基をもつ配位子の合成も進行中である。出発原料として、P-ブロモベンズアルデヒドおよび5-ブロモサリチルアルデヒドを用い、アルデヒド、フェノールを保護した後、ブロモ基をホウ酸基に変換し、アルデヒドの保護基をはずした後、ジエチレントリアミン、トリス(2-アミノエチル)アミンとの縮合をおこなって目的のシッフ配位子を得る合成経路について現在検討を行っている。
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