研究概要 |
1:真に分子レベルの電子情報処理システムの創出に至る中長期目標として、単一の大型平面分子骨格内に多種多様な機能ユニットを定序配列に作り込んだプレーナー型モノシリック機能集積化分子の開発があげられる。その構築用の根幹素材として、本研究では可溶性・中分子量の各種機能分子モジュール群の開発を進めている。今年度は、特に半導体ナノアーキテクチャとの融合性について考慮した結果、平面格子状骨格を有する大型分子の構築とその各種基板上での合目的組織化のための分子モジュール群の開発を集中して行った。その結果、3,4-ジアミノチオフェン環を各種カルボン酸によりチエノイミダゾール環に変換する反応を利用して、「平面格子の要となる分子ジャンクションモジュール」、並びに「基板上への分子配置/固定化のためのアンカー用分子ブロック(物理吸着タイプ、共有結合タイプ、水素結合タイプ、配位結合タイプ)」を構築するスキームを確立した。現在、これらのモジュールを鎖状大型分子内に効率的に組み込む方法論について検討を進めている。 2:平面大型分子を各種金属/半導体基板上に合目的に精密配置し、個別分子レベルで機能発現させるための分子工学的戦術を体系化するため、本研究では新規開発した一連の分子モジュール群についてナノ計測実験を系統的に進めている(通信総研/物材研究機構ナノグループとの共同研究)。本年度はアルキル鎖とブロック型絶縁被覆ユニットを有するチオフェン4-6量体について低温・超高真空STM観測(金(111)基板、Si(100)基板)を行った結果、各々の分子構造修飾が自己組織化能に及ぼす効果を実空間観測像から詳細に解明することができた。さらに、水素終端シリコン(111)表面上に大型分子を接合するための新規アンカーポイントを導入することにも成功している(分子研・多田Gとの共同研究)。
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