アリル及びプロパルギルリン酸エステルに対してアルキルクロムアート反応剤"Bu_6CrLi_3"または"Bu_5CrLi_2"を作用させると、アルキル化ではなく還元が起こり、それぞれ対応するアリル及びプロパルギルクロム反応剤が生成することを見つけた。生成したこれらの反応剤は求核反応剤として多様な求電子剤と反応し、炭素骨格形成に有効であることを明らかにした。 さらにα-ハロカルボニル化合物に対しても還元反応を起こし、クロムエノラートが生成することを見つけた。これらのエノラートはオキシラン類とはそのままでは反応しないが、Et_3Al共存下に反応してホモアルドール反応生成物を与える。一般にホモアルドール反応にはホモエノラート合成等価体を使うのに対して、本反応ではエノラートを直接利用できる点が特徴である。一方でEt_2AlCl共存下にはオキシランがアルデヒドに転位し、転位生成物であるアルデヒドとエノラートとのアルドール反応生成物を与えることを見つけた。エノラートの存在下にカチオン転位が起こり、選択的に転位生成物であるアルデヒドに対してエノラートが求核的に反応する点は興味深い。また、Lewis酸を選択することによりホモアルドール、アルドール反応を完全に制御できる点が本反応系の特徴である。
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