本研究は、穏和な反応条件下で多層カーボンナノチューブ(MWNT)を合成するための金属担持触媒の開発を目的とし、以下の研究成果を得た。 塩化金(III)酸イオンの水素化ホウ素ナトリウムを用いた液相還元により調製したドデカンチオール保護金ナノ粒子を各種酸化物担体上に含浸担持させ、200℃で0.5時間焼成することで触媒を調製した。窒素で希釈したアセチレンまたは一酸化炭素を所定温度で触媒上に30分間流通させてMWNT生成反応を行なった。担体としてシリカ-アルミナを用いると550℃以上の温度でアセチレンからMWNTの生成が認められた。温度を高くした程(〜800℃)、結晶構造の発達したMWNTの生成が確認できた。チタニアなどの塩基性担体よりもシリカ-アルミナなどの酸性担体の方がMWNTの生成量が多い傾向にあり、金属酸化物担体の種類によって直線性、太さ、層数、先端部の開口の程度などの異なるMWNTが生成した。炭素源として一酸化炭素を用い、750℃で1時間反応させるとバネの様なコイル状の形をしたMWNTが生成した。通常の直線的な形状をしたMWNTでは、筒状の胴体部分は6員環のみから構成されている。コイルの形を形成するためには、筒の胴体部分に5員環や7員環が導入されなければならない。一酸化炭素を用いた場合にこのような特殊なMWNTが生成する機構の解明が望まれる。すなわち、機構の解明はMWNTの形状を任意に制御しうる可能性が期待できる。
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