研究概要 |
先ず、固相反応の適用範囲を拡大するために、種々の有機化学反応を固体状態で行った。反応基質や反応試剤が液体の場合は、溶媒を使用しないそのままの状態即ち無溶媒条件で反応を行った。アルコール類の無溶媒シリル化反応は能率よく進行した。また、Claisen反応やCannizzaro反応も無溶媒条件で能率よく進行することが判明した。更に、Thorpe反応も無溶媒条件下で能率よく進行することを見出した。そして、交差ClaisenおよびThorpe反応も無溶媒条件で効率よく進行させることに成功した。これらの無溶媒反応をIRスペクトルの連続測定で追跡して反応機構を解明することもできた。たとえば、無溶媒Thorpe反応のスペクトル追跡で、イミン反応中間対の検出に成功した。これらの成果は、溶媒中の反応では達成が困難である。結晶を用いる、いわゆる固体状態での反応も能率よく進行した。たとえば、2-ナフトールとFeCl_3の粉末を混合して放置しておくと、カップリング反応が能率よく起こって、2,2'-ビスーβ-ナフトールが収率よく得られた。しかし、2-ナフトールと1,2-ナフタレンジオールとの交差カップリング反応は、複雑な反応混合物を与えた。ホスト化合物に2種類のゲスト化合物を包接させることにも成功した。たとえば、互変異性を起こす化合物にホストを加えて、2種類の互変異性体を1:1の比率で包接した結晶を得ることができた。この2種類のゲスト間で反応を起こすことができれば、交差カップリング反応が、そして、キラルホストを使用できれば不斉選択的交差カップリング反応が達成できることになる。目的達成までもう一歩のところまで来たことになる。
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