研究概要 |
ヒ素の間接固相吸光光度法による定量法について基礎的検討を行った。この方法は,次の置換反応に基づいている。 2As(APDC)_<3,樹脂> + 3 Cu^<2+> → 3 Cu(APDC)_<2,樹脂> + 2As^<3+> (1) ここで,APDCはピロリジンジチオカルバミン酸アンモニウムを表す。すなわち,ヒ素をAPDC錯体として微細なイオン交換樹脂に疎水性相互作用により抽出し,樹脂を母液からろ過により分離し,銅(II)を含む溶液に懸濁させ,ヒ素(III)-APDCをCu(II)-APDC錯体に変換したのち,再びメンブランフィルターに捕集し,樹脂相の吸光度を直接測定する方法である。式(1)の正当性を次のようにして検討した。はじめにAPDCと過剰の銅(II)との反応で生成するCu-APDC錯体の吸光度を測定してAPDCの検量線を求めた。次に,一定量のヒ素(III)をAPDC錯体としたのち,Cu-APDC錯体に変換して吸光度を測定した。As(III)と反応したAPDCの物質量はCu(II)と反応したAPDCの物質量に等しいこと及びCu(II)とAPDCは1:2のモル比で,As(III)とAPDCは1:3のモル比で錯形成することから,As(III)-Cu(II)-APDC系において反応に関与したCu(II)とAs(III)のモル比を求めたところ2.87: 2となった。この結果から,分析操作全体を通じてのAs(III)-APDCからCu(II)-APDCへの変換率は96%と見積もることができた。 さらに,デンシトメータを用いて積算反射吸光度を測定する方法と,通常の分光光度計を用いて透過吸光度を測定する方法を比較検討し,それぞれの分析条件の最適化を行った。どちらの方法も,50mlの試料を用いることにより,環境基準である10ppbのヒ素を定量できる感度を有していることが明らかとなった。
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