研究概要 |
平成13年度の研究内容は以下の通りある。 1.モリブデン黄法によって発色するシリカの溶存状態;天然の水試料のシリカの定量は一般的にモリブデン黄法が用いられる。シリカは水溶液には、様々な化学形で溶存しているが、モリブデン黄法によって得られたシリカの定量値には、4量体のシリカ錯体では確実に発色することを明らかにした。(Anal.Chim.Acta, 429(1), 117-123(2001)) 2.塩化カルシウム水溶液中のシリカの化学種の同定;塩化ナトリウム水溶液中のシリカ濃度に比べて塩化カルシウム水溶液に溶解できるシリカ濃度が著しく高い。塩化カルシウム水溶液中では、シラノール基とカルシウムイオンの結合状態が、bidentateであること、さらに塩化カルシウム水溶液中にはlinear tetramerが主成分であり、この濃度変化が、塩化カルシウム水溶液中に溶解するシリカ濃度に影響を与えることを明らかにした。塩化カルシウム水溶液中では7量体までのシリカが存在し、塩化ナトリウム水溶液中では6量体のシリカ錯体までが存在できることがわかった。(J.Trace and Microprobe Techniques, 19(4), 581-589(2001)) 3.塩化ナトリウムと硝酸ナトリウム水溶液濃度変化に対するシリカ溶存化学種の変化;ナトリウム塩溶液において、ナトリウム濃度が0.5moldm^-3(M)で塩析現象が生じた。この塩析現象は、ナトリウム濃度が0.5M以下ではシリカ錯体の分子の安定性が主にシリカの溶解に影響し、ナトリウム濃度が0.5M以上ではシリカ錯体の水和されやすさに依存することがわかった。これらの効果をlinear tetramerとcyclic tetramerのピーク強度比によって数値化し、ナトリウム塩水溶液のシリカ錯体の塩析の意義を明らかにした。(Anal.Sci., in press)
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