平成15年度は以下のような研究の報告を行い、科学研究費としてを交付された3年分の研究結果結果のまとめを行った。 (1)FAB-MSによるシリカ化学種の同定において、シリカのシラノール基がプロトンからナトリウムイオンにイオン交換するとき、イオン交換した錯体の性質と溶媒である塩溶液によって塩析現象も含め、その錯体の生成条件が決まることを明らかにした。(J.Trace and Microprobe Tech.にて報告した) (2)三宅島では二酸化イオウが放出され、水と火山灰が接触するだけで、高濃度の硫酸が生じることを報告し、この水には加水分解が進んだシリカが多く含まれていることを明らかにした。(内容の一部を分析化学に報告した) (3)塩類化土壌などの天然の系の実際のシリカの濃度変化とアルカリ金属、アルカリ度類金属イオンとの関係とFAB-MSによって得たシリカ化学種の溶存状態とを比較して、理論的に説明する。(Anal.And Bioanal.Chem.に報告) (4)天然に産出する温泉水の中には、そのシリカの濃度が高いものがあることが知られている。シリカが魚卵状シリカとして産出する温泉水の水試料を、シリカが析出しない一般的に存在する温泉水の水試料と比較し、シリカが魚卵状に析出する条件について検討した。(Instrumentation Sci. & Tech.に報告した。) (5)海水では、深さに応じてシリカの濃度は一様に増加する。海水中には、さまざまな陽イオンが存在するので、シリカ化学種は、さまざまな状況を加味した上で、同定すべきである。そのために、同じ採水地点でさまざまな海水を深度別に採取し、深度に応じて変化するシリカ化学種を詳細に検討したところ、海水塊の性質に応じて、シリカ化学種の相対濃度比が変化した。これにより、海水中の水塊のトレーサーとしてのシリカ化学種の有効性を明らかにした。
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