イオン対抽出の機構の解明と新規多元素同時分析法の開発

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13640600
• 研究機関: 新潟大学
• 研究代表者: 澤田 清 新潟大学, 理学部, 教授 (40089850)
• 研究分担者: 佐藤 敬一 新潟大学, 理学部, 助教授 (60225935)
• キーワード: 溶媒抽出 / ポリエーテル / イオン対 / NMR / フタロシアニン / 蛍光光度測定 / 第4級アンモニウム / EDTA

研究概要

鎖状ポリエーテルによる金属イオンの抽出挙動と構造
単分散ポリエーテル誘導体を抽出剤として、アルカリ金属、アルカリ土類金属および2価重金属イオンの抽出平衡を調べた。これらの結果より、抽出性を規制する最も大きな要因はイオン半径と電荷であり、金属イオンの水和エネルギーが関与していることがわかった。
ポリエーテル錯体のアルカリ土類金属、2価遷移金属イオンとの錯体の詳しい構造を、NMR分光法によって調べた。イオン半径、荷電数による錯陽イオンの構造の違いを明らかにした。また、常磁性イオン錯体により遠距離の相互作用、また、ヘテロ環を有する対陰イオンにより、イオン対の構造を明らかにした。
ポリエーテルを有するフタロシアニンを合成し、アルカリ金属およびアルカリ土類金属イオンとの相互作用を調べた。NMR分光法および蛍光光度法により、金属イオンはポリエーテル部位で錯形成を行い、フタロシアニン環にも影響を与えることがわかった。多元素同時分析への適用の基礎的知見が得られている。
EDTA錯体の抽出挙動と機構の解明
種々の第4級アンモニウムイオンを用いて、EDTA(エチレンジアミン4酢酸)配位子の抽出挙動を調べた。非対称な構造を持つTOMA(トリオクチルメチルアンモニウム)イオンが特異的に良好な抽出性を示すことがわかった。抽出剤であるTOMAも有機溶媒中で多量化しており、抽出機構が複雑な平衡であることがわかった。抽出性に及ぼす溶媒効果の知見等より、抽出化学種の構造が推定できた。
環境中のEDTA抽出分離・定量法の基礎として、Fe(III)-EDTA錯体の抽出挙動を調べた。分配比がpHに大きく依存し、抽出化学種の変化が抽出性に大きく影響することがわかった。溶媒による影響も調べ、今後の実際分析、分析法の確率のための基礎的知見が得られた

研究成果

• [文献書誌] 澤田 清: "ポリエーテル錯体のイオン体抽出と構造 (2001)"ぶんせき. 2001. 599-605 (2001)
• [文献書誌] W.Duan: "Stability and structure of ethylenediaminepoly (Methylenephosphonate) complexes of the divalent transitionmetal ions in aqueous solution"Bull. Chem. Soc. Jpn. 74. 487-493 (2001)
• [文献書誌] 澤田 清: "Thermal stability of pyridine base complexes of cadmium chloride"Bull. Chem. Soc. Jpn. 74. 1285-1288 (2001)
• [文献書誌] 佐藤 敬一: "X-ray diffraction and Raman spectroscopic study of bis(pyridine base) complexes of cadmium(II) halogenide"Monatsh. Chem. 132. 1145-1155 (2001)
• [文献書誌] 澤田 清: "Solvent Effects on Ion-pair Distribution and Dimerization of Tetraalkylammonium Salts"Monatsh. Chem. 132. 1439-1450 (2001)
• [文献書誌] N.F.Abdel-aal: "Study of Adhesion Mechanism of Calcareous Scaling by Using Quartz Crystal Microbalance Technique"Anal.Sci. (印刷中).
• [文献書誌] 澤田 清: "分析化学便覧"日本分析化学会. 5 (2001)
• [文献書誌] 澤田 清: "二十世紀思想家辞典"誠信書房. 3 (2001)