研究概要 |
交付申請書に記載した「研究の目的」と「本年度の研究実施計画」に沿って実施した研究から以下の成果を得るとともに、三年間にわたる研究のとりまとめを行った。 1.金属指示薬のE値に関する知見を得るために、金属指示薬の配位官能基としてアミノ基およびカルボキシル基に着目し、フタル酸、アントラニル酸、o-フェニレンジアミン、安息香酸およびアニリンとニッケル(II)との1:1錯体NiA(電荷は省略)と1,10-フェナントロリン(phen)との錯形成速度をストップトフロー法で追跡し、自作した反応解析システムを用いてd[Ni(phen)^<2+>]/dt=K_<Ni>[Ni^<2+>][phen]+K_<NiA>[NiA][phen]で定義されるK_<NiA>を求めた。このK_<NiA>からNiAの配位水分子交換速度定数K_<NiA>^<-H20>を評価し、このK_<NiA>^<-H20>からAのE値(A)を評価し、E(A)値に反映されるAの配位官能基の効果を考察した。その結果、二座配位子のE値は対応する単座配位子のE値にそれらと隣り合う供与原子の隣接効果を考慮することにより定量的に記述できるとの結論を得た。この結論は、本研究組織が昨年度ピリジン類多座配位子のE値について得た結果、および脂肪族多座配位子のE値についてこれまでに得ている結果と一致し、上記の考え方が妥当であるとの確信を得た。このようにして評価したE値を用いれば、NiAの生成定数K_<NiA>をlogK_<NiA>=αE(A)+βH(A)で解析すればAのH値H(A)が評価できるとの見通しも得られた。 2.このようにして得たE値およびH値を用いて、本研究組織がこれまでに開発してきた速度差分析法(Sb(III)とSb(V)の同時定量法、Sn(II)共存下でのSn(IV)の選択定量法、亜硫酸塩の接触分析法)について、反応系の選択、反応条件の最適化の妥当性等を考察した。
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