平成13年度は、現有の光電子放射分光分析装置による半導体試料のスペクトル測定と、この装置の改良を中心に研究を行った。半導体試料としては、最も広く利用されているシリコンウエハーを対象とし、シリコン中への不純物ドープによる光電子放射しきいエネルギーの変化、スペクトル構造の変化を見出すことができた。また、シリコン表面の面方位によってスペクトルの形状が特徴的に変化することを明らかにした。これらの変化は、表面付近でのバンドの曲がりやシリコン表面の表面準位の状態を反映していることがわかった。装置の改良としては、分光計器製ダブルモノクロメータを紫外光電子放射分光器の紫外線照射系に組み入れ、従来の装置で測定上の問題であった迷光による光電子の放射を抑え、光電子の放射しきいエネルギー付近のスペクトル構造を正確に測定するための改良を行った。購入した照射紫外光分光のためのダブルモノクロメータに2つのステッピングモータを取り付け、それぞれを独立に駆動して照射紫外線の分光を効率良く行えるようにした。パーソナルコンピュータによる機器の制御と測定の自動化を行うため、ステッピングモータの制御には、I/Oインターフェイスを、空気カウンターの制御や光電子のカウントなど入力には、RS-232Cインターフェイスを、照射紫外線強度のモニターなどには、GPIBインターフェイスを用いる必要があるため、これらを効率良くまた、総合的に制御可能な機器制御用ソフトウエア"Lab View 6.0i"を購入し、制御系を構築した。
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