平成14年度は、前年度に改良した高分解能光電子放射分光分析装置による半導体試料のスペクトル測定と、水面上の錯体LB膜のスペクトル測定を行った。半導体試料としては、最も広く利用されているシリコンウエハーを対象とし、表面を清浄化した試料についてスペクトル測定を行った。その結果、シリコン中への不純物ドープによる光電子放射しきいエネルギーの変化、スペクトル構造の変化を見出すことができた。また、シリコン表面の面方位によってスペクトルの形状が特徴的に変化することを明らかにした。これらの変化は、表面付近でのバンドの曲がりやシリコン表面の表面準位の状態を反映していることがわかった。これらの結果より、本方法により大気下での半導体の分析、評価が可能であることを示すことができた。さらに、本方法では大気中での紫外光電子検出が可能であることを利用して、シリコン表面の大気中での酸化過程をその場測定した。その結果、シリコン(100)面では従来から提唱されているLayer by Layerの酸化過程が起こっていないことがわかった。さらに、水面上にRu錯体を展開し、水面上でのLB単分子膜の紫外光電子放射スペクトル測定を行ない、水面上での錯体濃度と光電子放射しきいエネルギーの関係を明らかにした。光電子しきいエネルギーは、表面張力の変化によく対応しており、水面上での錯体分子の2次元集合状態を本方法により評価できることがわかった。これらの結果は、論文誌に投稿中である。
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