研究概要 |
エレクトロスプレーする針先の上流に小型の超臨界流体(SCF)反応セルを結合し,直接オンラインで質量分析するためのelectrospray ionization mass spectrometry(SCF-ESI-MS)の開発を目的とする.そして,超臨界流体中の不安定化学種のキャラクタリゼーションをおこなうためのオンラインシステムを構築する.超臨界状態における光反応や有機反応の中間体や反応生成物をオンライン質量分析で迅速・高感度で検出する時の最大の問題点は,如何に最適なエレクトロスプレー条件を実現できるかということである.ESIの針先部を工夫することにより,安定なスプレー状態が得られることを見出した.SCF-ESI-MS法をもちいてCO_2SCF中における,(1)propylene oxide(PO)からpropylene carbonate(PC)の反応(2)1,2-Butylene Oxide(BO)から1,2-Butylene Carbonate(BC)の反応 の初期反応生成物の分析に適用した.その結果,反応(1)のPOのSCF反応生成物をオフラインで質量分析測定したときは,生成物であるPC関連イオンを検出することができた.しかしながら,高温・高圧下でのCO_2のSCF中で直接にオンライン質量分析したときは,生成物であるPC関連イオンは検出されずに,POのCO_2付加クラスターイオンが検出された.なぜオフライン測定とオンライン測定の違いによって,検出する生成物イオンが異なるのかその原因について,反応(2)をもちいて検討中である.反応(2)においても同じ結果が得られれば,オンライン測定で観測されるCO_2付加POクラスターがPC合成反応の重要な反応中間体であることが検証される.
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