研究概要 |
超臨界流体(Super Critical Fluid;SCF)は特異的な化学反応の媒体として近年注目されている.二酸化炭素の臨界点は31℃,72.1atmと低く,反応終了後は気相中へと気化するために取り扱いが容易であるので,超臨界二酸化炭素(scCO_2)を用いた研究が盛んに行われている.本研究では,scCO_2を利用した合成時に生成する不安定な反応生成物を捕捉・同定するために,scCO_2の小型合成装置とelectrospray ionization(ESI)質量分析計を直接結合したインターフェースを試作し,オンライン測定のためのSCF-ESI-MSを開発した.scCO_2による1,3-butadiene diepoxide(BDE)の反応では,BDEにCO_2 1分子が開環付加したbutadiene-1-carbonate-3-epoxide(BCE)が生成し,さらに2分子付加した1,3-butadiene dicarbonate(BDC)が最終生成物として得られる.そこで,このBDEの開環付加反応における反応生成物の分析にSCF-ESI-MSを適用し,SCFインターフェースの性能を検討した.オンラインSCF-ESI-MSのための低流量で安定にスプレーをすることができるインターフェースを試作した.正イオンモードでは,反応物BDEと生成物BCEのイオンは検出したがBDCのイオンは検出できなかった.しかし,負イオンモードでは,BDCのイオンを検出できた.その理由は,BDCとI^-との親和力が大きいので,MeOHへの溶解性が低くてもBDCが検出されたと考えられる.今回の目的であった不安定な反応中間体の捕捉はできなかったが,カーボネート反応のオンライン分析には,負イオンモードの測定が適していることがわかった.
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