本課題は、高速有機化合物分子の表面電離法(HSI;Hyperthermal Surface Ionization)及び電子衝撃法(EI;Electron Impact)を高速液体クロマトグラフ/質量分析計(HPLC/MS;High Performance Liquid Chromatography / Mass Spectrometry)に応用する装置の試作研究を行う。前年度までに、HSI/HPLC/MS装置のセットアップを完了し、第3年度は以下の研究を実施した。 (1)HPLC/HSIの検出特性の検討:HPLCからの液体流出物を、質量分離せずにHSI法で直接検出する研究を、前年度に引き続いて行った。逆相系液体クロマトグラフでは、水・・メタノール・アセトニトリル等の高い極性の有機溶媒を用いる。移動相に水を用いる例を初年度、n-ヘキサンについて昨年度検討し、今年度はメタノールについて検討した。100%メタノール、固体表面白金(Pt)を用いて、アルキルアミンについて検出感度が1.0C/g程度あり、10pg程度を検出可能な事、4〜5桁のダイナミックレンジを持つこと、ナフタセン等の多環芳香環化合物(PAH;Polyaromatic Hydrocarbon)も検出出来ることを明らかにした。(Analytical Chemistry投稿中)。 (2)HSI/HPLC/MSスペクトルの測定:昨年度に続き、各種操作条件の検討を始めた。操作条件として、(i)ノズル温度(分子の運動エネルギーに関係する)、(ii)固体表面温度、(iii)HPLC液体流速、などをパラメーターとして、(a)試料の検出感度、(b)バックグラウンドレベル、(c)ノイズレベル、等を検討しているHPLC移動相は水100%を用いている。固体表面はイリジュウム(Ir)、白金(Pt)を用いている。結果のまとめと投稿までには至っていない。
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