新規ヘテロクロマチン関連タンパクMeteorの同定とそれによる動原体の構築の研究

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13640614
• 研究機関: 京都工芸繊維大学
• 研究代表者: 井上 喜博 京都工芸繊維大学, ショウジョウバエ遺伝資源センター, 講師 (90201938)
• 研究分担者: 山口 政光 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 教授 (00182460)
• キーワード: ショウジョウバエ / 細胞分裂 / 減数分裂 / 染色体の異数化

研究概要

我々が分離したmeteor (mtr)変異体では、雄の減数分裂時に染色体の分配が異常となるため精細胞の異数化が頻度高く観察される。このため雄は不妊となる。さらに体細胞でも同様な染色体の異数化が観察された。劣性致死となるmtr~2変異体では、姉妹染色分体の早期分離が観察され、動原体構造が脆弱であることが示された。さらにヘテロクロマチン化による遺伝子のサイレンシングも一部解除されていることが見い出されていた。一方、この変異体をさらに詳しい解析した結果、染色体の異数化以外の表現型はmtr~2染色体上のmtrとは別の新規遺伝子の変異によることがわかった。そこで染色体の異数化をおこす原因遺伝子mtrに焦点をあてた研究をおこなった 完全長cDNAの単離を5'RACE法をおこない、cDNAがコードするタンパクの全一次構造(1173アミノ酸)を予想した。このタンパクはSS-B/LAファミリーに属し、LAドメインをもつ。ところがこのORFのN末には翻訳開始のメチオニン残基が見出せない。そこでORF全長のN末にメチオニン残基を付加したタンパクを発現させたところ、雄不妊の表現型が回復した。この結果から予想したORFがmtr遺伝子産物としての機能を有することが示された。さらにGSTとMTRとの融合タンパクを大腸菌内で発現、精製させ、これに対する抗体を作成した。抗体はSDS-PAGEで分子量210〜kDaのポリペプチドを認識した。この抗体を用いてMTRタンパクの細胞内局在を調べるとともに,mtr変異体において染色体の異数化が生じる原因を知るために微小管などの分裂装置に異常がないか調べている。

研究成果

• [文献書誌] Yamaguchi, M: "Ectopic expression of BEAF32A in the Drosophila eye imaginal disc inhibits differentiation of photoreceptor cells and induces apoptosis"Chromosoma. 110. 313-321 (2001)
• [文献書誌] Yoshida, H: "Overexpression of DREF in the Drosophila wing imaginal disc induces apoptosis and a notching wing phenotype"Genes to Cells. 6. 1-11 (2001)
• [文献書誌] Hirose, F: "Ectopic expression of DREF induces DNAsynthesis, apoptosis and unusual morphogenesis in the Drosophila eye maginal disc: possible interaction with Pc"Mol. Cell. Biol.. 21. 7231-7242 (2001)
• [文献書誌] Kwon E-J: "Transcriptional regulation of the Drosophila raf proto-oncogene by the transcription factor dE2F"Nucleic Acids Res.. 29. 1808-1814 (2001)
• [文献書誌] Crevel, G: "Nearest neighbour analysis of MCM protein complexes in Drosophila melanogaster"Nucleic Acids Res.. 29. 4834-4842 (2001)
• [文献書誌] Higashiyama, H: "Identification of ter94, Drosophila VCP, as a modulator of polyglutamine-induced eye degeneration"Cell Death Differ.. 9. 264 (2002)