微地形に対応した、水分・土壌栄養分布は実生の生存に大きく関与する。遷移初期にみられる、貧栄養かつ水分の乏しい環境下においては、これらを土壌中からの速やかな獲得能力が、種の定着可能性を決め、ひいては植物群集構造を規定する。菌根菌が植物体に定着し、効率よく土壌中のリンや土壌水分を獲得し、それらが植物に移動して植物成長に寄与するという仮説が提唱されている。しかし、米国セントへレンズ山では、微地形間での菌根菌定着様式が大きく異なり、植物が菌根菌を有するか否かは微地形に支配されるという結果が得られ、上記仮説は支持されなかった。理由として、セントへレンズ山では、菌根菌供給源が発達できるまでに遷移が進行していなかいことが揚げられる。 申請者は、これまで北海道有珠山および渡島駒ケ岳において永久調査区法を用いた継続調査を行っている。両火山は、近年噴火を行なったが、両者ともに噴火規模が小さく、完全に裸地化した地域から微量の火山灰堆積が認められる地域まで、幅広い環境勾配の中で調査が行える。この特色を利用し、微地形および長期的群集動態を考慮に入れ菌根菌-植物間相互作用を定量化することを目的として研究を開始した。1999年度より調査を開始し、本年度は、1)野外における菌根の植物への定着の度合いを微地形ごとに定量化し、これまでの動態観測データと照らし合わせ(論文投稿中)、2)野外土壌状態を各微地形別においての測定を行った。これらの組み合わせによって、実際に野外における各種子植物が定着するにあたっての菌根依存性を定量化し、これを積み上げ植物群集レベルでの菌根の寄与様式を明らかにすることを来年度以降の目標としたい。また、日本学術振興会外国人特別研究員としてコロンビア大学Jon Titus博士が来日し、1996年噴火跡地における種子植物と菌根菌の対応関係について共同研究を行った(論文準備中)。
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