火山では、裸地化した地域から微量の火山灰堆積が認められる地域まで幅広い環境勾配中で調査が行える。この特色を利用し、微地形および長期動態を考慮に入れ菌根菌-植物間相互作用を定量化することを目的として研究を行った。結果と考察は以下の通り。 1.裸地、草地、森林それぞれに調査地を設置した。各群集に設けた調査区内を樹冠下・草地・裸地・コケ優占地(駒ケ岳のみ)、リル発達地といった微地形に区分し(複数カテゴリを含む個所もある)、それらのマクロ-微地形関係における群集動態(特に優占種の動態)を測定した。その結果、木本植物の定着初期には、微地形がもっとも関与することを見出した。また、菌根分布も微地形と関係していることを示した。 2.各植物群集における優占種については全種を、各山頂域における種子植物についてはできる限り多くの種(駒ケ岳で約40種)の地下部を採取し、菌根付着量を定量化した。定量化にはメッシュカウント法がよく用いられるが、予備実験から本手法が全種には適応できないことが判明したため、トライパンブルー染色した菌根断片を元にした菌根頻度を測定した。その結果、これまで報告のなかった草本植物数種に外生菌が共生していることを発見した。 3.菌根が貧栄養下で植物群集発達に寄与する要因としては、土壌の中でもリンの取り込みを菌根が担うためと言われている。土壌中の、総有機物量、窒素濃度、リン濃度等と菌根菌の分布関係を測定した。その結果、外生菌頻度は標高増加およびそれに伴う噴火降灰物中の窒素減少に伴い増加すること、内生菌頻度は標高軽度とは関係がないことを見出した。 4.以上の結果を加え、火山遷移初期動態に関するレビューを行った。特に、駒ケ岳におけるカラマツのように生物的侵入が広範に起こっていることと、その要因としての菌根菌の重要性を指摘した。
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