マイクロサテライトDNA領域FL12とFL21を用いて、エゾアカヤマアリFormica yessemsisのスーパーコロニー内血縁度をコロニー間血縁度を比較するとともにスーパーコロニー内で血縁度の巣間比較を行った。その結果、スーパーコロニーにおける巣内血縁度は0.248〜0.484であり、忍路、厚田、真駒内(札幌市)のコロニー内血縁度と同レベルであった。また、スーパーコロニーにおける巣内血縁度は0.148〜0.343と低く、巣間距離との相関関係は認められなかった。このことは、スイスにあるF.lugubrisのスーパーコローで示唆されている遺伝的粘性(viscosity)による巨大コロニーの維持機構が存在していないことを示しており、他の維持機構の存在を示唆している。 ツムギアリOecophylla smaragdinaをアジア、ニューギニア、オーストラリアより採集し、cyt b遺伝子の680bp配列を比較し、個体群間の関係を求めた。その結果、アジア大陸、インドネシアのボルネオ島、大スンダ列島などのアジアグループ、オーストラリア・ニューギニアグループに加え、スラウェシ島の個体群が遺伝的に区別された。今後はグループ間の遺伝的構造比較を行っていくつもりである。
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