研究概要 |
一般に,飛び火は極めて稀な事象であることから確率的なプロセスとして捉えなければならない.特に,分散固体が定着に成功するかどうかは,人口学的確率性やアリー効果の存在により大きく左右される.さらに,分散固体の出現速度はローカルな個体群動態によって規定される.これらの側面を適切に組み入れた侵入生物の分布拡大に関するモデルとして,セルオートマトンモデルならびに差分積分モデルの確率論バーションを構築した. ついで,モデルの数学的解析を行うことにより,飛び火的分散が分布パターンの時・空間パターンにどのような影響を与えるかを明らかにし,特に,拡がる速度を飛び火の頻度と飛び火の平均移動距離の関数として一般公式を導出した. 一般に,哺乳類,昆虫,種子などの分散個体の移動距離分布のデータは,数百メートルの範囲の短距離分布に関するものがほとんどで,風や動物などにより運ばれる長距離移分散に関するデータはほとんど存在しないのが実状である.上記のモデルから飛び火的分散の特性パラメタ-を定量的に予測し,それらがもたらす効果を分離して評価する理論式を導びいた. また,理論の具体的な応用として,茨城県で拡がったマツ枯れの感染伝幡過程の解析を行った.茨城県ではマツ枯れが侵入する前のマツ林に関する5万分の1縮図のデータが存在し,かつ,10年間にわたる詳細な感染拡大図が取られている.まず,茨城県の初期密度と等しいマツの初期分布を2次元上に設定し,その上でマツとカミキリのライフサイクルを取り入れたメカニスティックモデルを用いて分布拡大過程を解析した.また,感染マツのレベルがある〓値密度を超えるとカミキリ駆除が行われるとし、〓値密度と拡がる速度の関係を明らかにした.
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