研究概要 |
栄養卵の存在が確認されたミツボシツチカメムシとベニツチカメムシを対象に,今年度は栄養卵の生産・消費パターン並びに栄養卵の機能を特定することに焦点を絞った調査・実験を行った。 栄養卵投資・消費パターン:ミツボシツチカメムシでは,40-120個の受精卵を卵塊として産み終えた後、孵化間際まで栄養卵を徐々に産み足した。大型の雌親ほど生産する受精卵と栄養卵が増加する傾向があった。受精卵数と栄養卵数の関係をみたところ,トレードオフは認められなかった。受精卵当りの栄養卵数も大きく変異し,この値は雌親の体サイズが増すにつれて小さくなっていた。生産した栄養卵は,幼虫によって孵化後約1日で完全に消費された。一方,ベニツチカメムシの雌は一回繁殖で,卵塊当たり50-220個の卵を生産した。ミツボシツチカメムシとは異なり,受精卵と栄養卵は一度に産下された。栄養卵の割合は,15-80%と雌個体によって大きく変異した。また両種において,栄養卵は形態的な分化(サイズ等)を遂げている可能性が示唆されたが,この点に関してはさらに検討中である。 栄養卵の機能:ミツボシツチカメムシでは,餌となる種子が存在しない条件では,栄養卵の存在によって幼虫の生存期間は約2倍に延長された。種子が十分に供給された条件では,雌親の随伴がほぼ終了する時期の生存率に差がなかったが,幼虫の発育は栄養卵の摂食によって促進され,平均体重は栄養卵の存在したクラッチで明らかに重かくなった。ベニツチカメムシでも,栄養卵を含む卵塊から孵化した幼虫は,栄養卵を除去した卵塊ものに比べて24時間後の体重が重く,10日後の生存率が高く,かつ脱皮の同調性が高いことがわかった。両種において,栄養卵は兄弟姉妹の栄養資源として機能していることが明らかとなった。
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