研究概要 |
現在,本年度の成果として以下の2本の論文をレフェリー制の学術誌に発表予定である. 1.Facultative sexual reproduction under frequency-dependent selection on a single locus. Journal of Theoretical Biology, (in press). Hamilton(1980)は有性生殖の進化を病原体の存在と結びつけ,特定の遺伝子座の遺伝子型に負の頻度依存選択がかかる場合には,選択の強さによっては対立遺伝子の組み合わせを変えるために有性生殖が進化することを指摘した.同様な要因が,有性生殖個体と無性生殖個体を同時につくり出す部分的有性生殖(Facultative sexual strategy)の進化を引き起こす可能性について理論的に解析した.無性生殖,有性生殖,部分的有性生殖の間のペアワイズでの競争をシミュレートした結果,有性生殖が進化できる条件下では一般に有性生殖集団に部分的有性生殖が侵入しうることが分かった. 2.Factors affecting binary sex evolution with respect to avoidance of vertical transmission of deleterious intracellular parasites. Journal of Theoretical Biology, (in press). Hutson and Low(1993)は,性の進化を細胞質共生体と関連させて理論的に議論した.彼らは,親から子へと垂直感染する有害な細胞質共生体から逃れるために配偶子に細胞質を受け渡さない性質が進化し,その後,細胞質を受け渡すタイプと受け渡さないタイプの間での相互の選好性が進化したことが性の起源である可能性を示した.本論文では,そのようなメカニズムにおいて水平感染や自然感染,感染からの回復といった様々な要因がどのような役割を持つのかを理論的に解析した.
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