本年度の主な研究成果は以下のとおりである。 Triploid bridge and role of parthenogenesis in the evolution of autopolyploidy. 倍数体化は様々な生物の進化において重要な役割を果たしてきた。例えば、植物では顕花植物の30〜70%が倍数体由来であると考えられている。こうした重要な役割にもかかわらず、倍数体化の進化過程は十分には理解されていない。2倍体と4倍体の交雑から3倍体が生じることから、一般に倍数化においては3倍体の存在が重要な役割を果たしてきたと考えられている(triploid bridge)。しかしその一方で、2倍体と4倍体との交雑で生じる3倍体は、特に植物においての発生率や稔性が一般に低く、そのことが倍数体化を抑制するとも指摘されてきた(triploid block)。本研究では、単為発生の存在が倍数化プロセスを促進する可能性について、数理モデルを用いて理論的に解析を行った。その解析の結果、3倍体や4倍体が単為発生を行う場合には、3倍体の適応度が低くても倍数体化が進みうることが示された。特に3倍体が単為発生を高頻度で行い、しかも4倍体の適応度と単為発生から生じた3倍体の適応度がともに高い場合には特徴的な進化過程が起こりうる。倍数体化の初期段階では、4倍体はオリジナルの2倍体との交配で3倍体を生んでしまうため増えることはできない。しかし、3倍体が単為発生によって徐々に増加して2倍体を駆逐することで、4倍体は2倍体との交雑による抑制から解放され、急速に増加して最終的には3倍体を駆逐し集団を占めてしまう。すなわち、3倍体は2倍体を駆逐することを通じて4倍体化を促進するのである。 この研究を通じて、triploid bridge、triploid block、そして単為発生という3つの要因の、倍数体化における相対的な役割が明らかになった。本研究の成果は既にThe American Naturalist誌に受理されており、近日中に公表される予定である。
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