浅い水域における水生植物群落の有無が、水環境とプランクトン群集に与える影響を、釧路湿原の湖沼の調査、兵庫県ため池の調査、隔離水界実験などから検討した。 まず湖沼面積の40%以上が沈水植物群落で被われている湖では、そうでない湖沼に比べ、同じ制限栄養塩レベルの夏季の植物プランクトン現存量が有意に低かった。また、植物プランクトン群集組成が大きく異なっていた。従って、沈水植物群落の有無は、生態系機能に大きな影響を及ぼすと考えられた。 抽水植物・浮葉植物群落のあるため池と、そうした群落がなく護岸されているため池での水質ならびに植物プランクトン群集組成を比べた。双方ともに池の全リン濃度(TP)は0.11-0.52mg・1^<-1>、全窒素濃度(TN)は1.00-4.73mg・1^<-1>、TN : TP比(重量比)は4.6-14.6の間にあったが、植生のない後者の池ではアオコが発生する場合が多かった。従って、抽水植物・浮葉植物群落のある池とない池でも植物プランクトン群集組成が大きく異なることが示唆された。 自然湖沼のヒシ群落中では、水中の光の減衰が大きく、溶存炭素濃度が高く、水中のpHと底泥付近の酸素濃度がともに低くなった。こうした水質への影響は顕著にもかかわらず、植物プランクトン群集への影響は顕著でなかった。さらに、ため池の中に隔離水界4基を構築して、そのうちの2基にヒシを植裁した実験を行った。ヒシの植栽によって、水質や物理環境は先の湖沼での結果と同じになった。しかし、動植物プランクトン群集への顕著な影響は認められなかった。沈水植物群落の生態系への影響は顕著であるが、他の群落の水質ならびにプランクトン群集への影響は検討の余地を残した。
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