本研究は、植物の光環境応答に関わる新奇核タンパク質の同定を目的として、暗所で強く発現し、光照射により発現が低下する核輸送装置成分であるイネインポーティンα1a(IMPα1a)との結合により単離した新奇タンパク質IABP4の機能の解明を目指して行われた。最終年度である今年度の研究実績は下記の通りである。 1.IABP4の発現様式はどうか:半定量的RT-PCRによって、IABP4mRNAの発現はイネおよびシロイヌナズナの黄化芽ばえ・緑化芽ばえにおいて、IMPα1a遺伝子と同じく光による下方制御を受けることがわかった。ただしIABP4では光照射による発現量低下が一過的である点が異なる。また、シロイヌナズナにおいてIABP4mRNAは花/つぼみでやや多いが、調べたすべての器官で発現していた。 2.IABP4は光条件によって局在性を変える核タンパク質であるか: 3.IABP4は核内で他のタンパク質と複合体を形成しているか、またリン酸化されているか: 2.、3.のいずれについても、作製した抗IABP4抗血清はIABP4以外の植物タンパク質に対する抗体を含むことがわかったため、未実施となってしまった。今後は抗体の精製が必要である。 4.IABP4の植物体における機能は何か:前年度シロイヌナズナで同定したLABP4遺伝子の5個のノックアウト系統について、暗黒下生育での表現型を調べたところ、フックおよび子葉が展開した芽ばえの割合が野生型に比べて多く、IABP4タンパク質が暗黒下の葉で光形態形成に阻害的に働く可能性が示唆される。しかしながら、上記の発芽個体はすべてIABP4遺伝子へのT-DNA挿入をヘテロにもつことから、ホモ挿入個体が胚性致死または発芽不能となることが示唆され、IABP4は植物にとって必須の遺伝子であると考えられる。
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