研究概要 |
サイトカイニンレセプターをコードしていることが遺伝学的に明らかになったAHK4の発現は根組織特異的であり、シュート部位での発現はきわめて低い。それゆえシュートにおけるサイトカイニンの生理学的役割はいまだ不明である。この点を明らかにする目的で、本年度はシュートで発現が認められるAHK4相同遺伝子であるAHK2と3に焦点を当てて研究を行った。 1)AHK2,3の発現解析 AHK2,3がいかなる部位で発現しているのかを組織及び細胞レベルで解析するために、AHK2,3とGUSならびにGFPの融合タンパク質を構築した。構築に当たってはプロモーターと予測される領域に加えて膜貫通及び細胞外ドメインの下流にレポーターを接続し、形質転換植物体を作製した。 AHK3-GFP融合体の観察では、GFP活性は根・胚軸・子葉や本葉で認められる。根や胚軸においてはコルメラ細胞群や維管束で、若い本葉では特に葉緑部で、成熟葉では葉脈で発現しているものと考えられる。またGFPの蛍光は細胞の外縁を取り巻くように認められ、AHK3が細胞質膜に局在するという予測と一致する。AHK2の融合体やAHK3-GUS融合体については形質転換植物の構築ができたところである。 2)AHK2,3遺伝子のノックアウト変異体の検索 両遺伝子のT-DNA挿入変異体の検索を、かずさDNA研究所およびWisconsin大学のラインを対象に行った。その結果、AHK2遺伝子については1ラインが、AHK3遺伝子については2ラインの挿入変異体を同定できた。AHK3変異体の二つのラインについてはホモ接合体を確立できた。予備的な解析の段階であるが、これらは通常の生育条件下では特に目立った表現型は示さない。しかし胚軸から調整したカルスにおいてはサイトカイニンに対する感受性が低下している。おそらくAHK2の活性によってシュートの生育に関しては顕著な表現型を示さないものと考えられる。今後AHK2とAHK3の二重変異株を作製することでシュートにおけるサイトカイニンの生物学的役割が判明するものと思われる。
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