研究概要 |
葉緑体に光ストレスを与えたときに,光化学系IIの反応中心D1蛋白質とその周辺蛋白質の間でみられる分子間架橋について調べ,次のような結果を得た。 (1)In vivoでのD1蛋白質架橋産物の検出 これまでD1の架橋産物は光化学系II膜など,in vitroでの光照射実験で検出されてきたが,本研究でははじめて生葉のリーフディスクを用いてD1架橋産物の検出に成功した。架橋の形成の条件は生理的な高温(35(8160)1640℃)での光照射である。この事実は蛋白質の架橋形成が生理的な過程であることを強く示唆している。 (2)光ストレス下での植物細胞での活性酸素発生の可視化 光合成の光阻害の原因は葉緑体で発生する活性酸素である。本研究では活性酸素の指標としてケイ光色素(DHE, DCFH/DA)を用い,タバコの培養細胞でスーパーオキシドと過酸化水素の発生をケイ光顕微鏡により検出した。その結果,(1)の生葉でD1蛋白質の架橋産物を生じる条件で,活性酸素発生の促進を観察した。活性酸素を発生した細胞の一部は細胞死を起こすことも分かり,光化学系IIの損傷が細胞死につながる可能性が明らかとなった。
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