研究概要 |
光ストレス下では光化学系II反応中心D1蛋白質が速やかに分解される。本研究では,D1タンパク質の新しい分解経路を見出し,その経路の特徴を調べ,新しい経路に関わる諸成分の解析を行った。 1.D1蛋白質架橋産物をするストロマプロテアーゼの単離 光損傷を受けた光化学系II反応中心蛋白質D1は周辺の光化学系II蛋白質と架橋反応を起こす。この架橋産物はストロマに存在するプロテアーゼによって分解される。本年度は,ゼラチンを用いたactivity gel電気泳動法を用いて,プロテアーゼの部分精製に成功した。近い将来,プロテアーゼが完全に精製されることが期待される。 2.D1蛋白質の架橋を用いた光化学系II蛋白質の空間配置の決定 光化学系IIの酸化側光阻害で生じる内在性カチオンラジカルは,D1蛋白質と周辺蛋白質の架橋を引き起こす。この時,D1蛋白質の架橋の相手を特定することにより,光化学系IIの反応中心周辺の蛋白質の空間配置を調べた。その結果,光化学系IIのチラコイドルーメン側ではD1とアンテナクロロフィル蛋白質CP43が互いに近接し,その表面をOEC33が覆うことで,D1とCP43の空間配置が維持されているとの結論が得られた。 3.D1蛋白質の架橋と一重項酸素分子の関係について 光化学系IIの還元側光阻害では一重項酸素が生じる。この活性酸素は,比較的高い温度(35-40℃)で光化学系IIが光照射されると極めて発生しやすくなることを見出した。一重項酸素はD1蛋白質に損傷を与え,これが周辺蛋白質との架橋の直接の原因となることも明らかになった。
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