研究代表者は、モデル植物シロイヌナズナを用いたこれまでの研究により、新規開花制御因子LKP1、LKP2を見い出した。今年度はこのうち特にLKP2について詳しい解析を行った。cDNA解析の結果から、LKP2遺伝子は612アミノ酸からなる66.35KDaの蛋白質をコードしており、ADO/FKF/LKP/ZTLファミリー遺伝子の1つに分類できた。また、屈光性に関与する青色光受容体として知られているphototropin(NPH1)は青色光受容部位として2つのLOVドメインを有しているが、LKP2は1つのLOVドメインしか有していないことが明かとなった。LKP2はこの他に1つのF-boxと6つのkelch repeatといった機能ドメインを有していた。RT-PCR法を用いてLKP2遺伝子の発現を解析したところ、LKP2遺伝子は調べた全ての器官(根、茎、葉、花、さや、種子)でその発現が認められた。また、同じファミリーに属するFKF1の遺伝子発現が概日リズムを示すのに対して、葉におけるLKP2のRNAレベルは明暗周期を通じて一定であった。この結果はLKP2の遺伝子発現が概日時計の制御を受けていないことを示している。35Sプロモーターを用いてLKP2 cDNAを過剰発現させた形質転換植物体を作製したところ、この植物では連続光下、連続暗所下の両方で、葉の運動や遺伝子発現を指標とした概日リズムが見られなくなった。また、LKP2過剰発現体では白色光下、赤色光下、あるいは青色光下での胚軸伸長が認められた。更に、この形質転換植物体は長日条件下でも短日条件下で育てた植物体と同時期に抽台・開花するといった開花遅延が認められた。この植物の春化処理による抽台・開花促進は認められなかった。これらの事から、LKP2は概日時計の振動体の内部、或いはそれに非常に関連して機能しているのではないかと考えられた。
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