研究概要 |
日長感受性は生物の重要な性質であり植物では花成などを制御する。GLP(germin-like protein)遺伝子は、日長感受性を反映した転写調節を受けることが判明した植物で最初の遺伝子であり、日長感受性の分子機構を調べる手がかりになるものと考えた。本研究ではGLPの機能を調べる目的で長日植物シロイヌナズナのAtGLP1, AtGLP2と短日植物アサガオのPnGLPの遺伝子を過剰発現、発現抑制、または発現制御して花成時期等を観察すると共に、日長感受性を制御するプロモーター調節配列の同定を目的とした解析を行った今年度はシロイヌナズナの形質転換植物を作成したが、これまでのところ開花時期に関して顕著な違いは観察されていない。AtGLP1を過剰発現する系統がほとんど得られないが、これはAtGLP1が若い莢でも発現することから、種子の形成に対して阻害的な影響が生じるものと考えられた。今後もこれらの観察は継続して行う。一方、日長感受性のプロモーターの研究では、ルシフェラーゼをレポーター遺伝子としてAtGLP1, AtGLP2, PnGLPプロモーターをシロイヌナズナに形質転換し、制御配列の探索を行った。その結果、AtGLP1, AtGLP2に関して、競合するグループとほぼ同様の結果(-296〜389bpが重要である)が得られた。一方、アサガオのプロモーターをシロイヌナズナに遺伝子導入しても、アサガオと同じく夜間に発現する結果が得られた。これは日長感受性を司る調節配列が存在することを仮説として進めてきた本研究に反する結果であり非常に興味深い。世界的に今年度は日長感受性研究に関して急速な展開があり、概日時計による計時機構の関与を実証する結果が複数報告された。日長感受性に関する単純な制御配列ではない機構の存在が明らかとなり、GLPのプロモーターの発現制御機構はこれらと矛盾しない機構を提示する。
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