研究概要 |
本研究では生物界に存在する多種多様なカロテノイド色素の機能と構造の相関を調べるため形質転換が比較的容易である紅色光合成細菌を用いて、シリーズを成すカロテノイド分子種のそれぞれを蓄積する一群のカロテノイド合成系変異株を作成することにより、系統的にカロテノイド分子種の構造と機能の関係を明らかにすることを目的とした。 1.紅色光合成細菌に見られる2系列の主要カロテノイド生合成経路を併せ持つRubrivivax gelatinosusを用いてカロテノイド合成酵素欠損株の作成を行い、ファイトエン不飽和化酵素(CrtI)、ニューロスポレン/リコペン水酸化酵素(CrtC),スフェロイデン酸化酵素(CrtA)の欠損株を作成した。また、単一のカロテノイド分子種のみをもつ変異株作成のために、CrtI/CrtAおよびCrtI/CrtC2重欠損株を作成し、さらに特異性の高い他種のCrtIを導入することにより化学構造としてシリーズをなす6種のカロテノイドそれぞれを蓄積する変異株を作成することが出来た。 2.これらの変異株の作成により、使用した紅色光合成細菌Rvi. gelatinosusがファイトエン不飽和化酵素の特異的性質により2系統のカロテノイド生合成経路を併せ持つことを示した。 3.作成した変異株について光障害耐性と酸素障害耐性の差異およびその要因について検討した。具体的には野生株およびカロテノイド欠損株と共に強光下あるいは一重項酸素存在下での生残率を調べた。その結果、強光処理では共役二重結合数11以上のカロテノイドがバクテリオクロロフィルの三重項励起状態を解消し活性酸素の発生を抑制するが、共役二重結合数の多いものを含めて直鎖状カロテノイドは直接一重項酸素を消去する機能は低いことを示唆した。一方スフェロイデノンなど酸化型カロテノイドが相対的に高い一重項酸素消去能を示した。
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