研究概要 |
光合成の酸素発生系において、Mnクラスターの安定化と機能保持に重要な役割をもつ表在性33kDa蛋白の構造を、プロテアーゼ切断部位の結果から、植物種間で比較した。その結果、33kDa蛋白の構造は植物種間で異なり、プロテアーゼ切断部位から大きく3つの型に分類できることが明らかになった。すなわち、ラン色細菌や紅藻の33kDa蛋白は一次構造上で156番目から195番目までの間でプロテアーゼ(キモトリプシンとV8プロテアーゼ)により特異的に切断される部位がある(ラン色細菌型)。一方、高等植物(ホウレンソウと稲)の33kDa蛋白はN末端に近い16番目から19番目までの間にプロテアーゼにより特異的に切断される部位を有する(高等植物型)。また、ユーグレナや緑藻の33kDa蛋白は上記のラン色細菌型と高等植物型の両方の切断部位が存在する。なお、これらのプロテアーゼにより特異的に分解されるアミノ酸残基(Phe.,Glu.,Asp.など)は全ての植物種間で殆ど保存されているので、上記の結果は、33kDa蛋白の高次構造はが植物種によって異なる事を示している。少なくとも、プロテアーゼにより分解される領域(33kDa蛋白の表面に露出していると考えられる領域)が、酸素発生系の進化の過程で変化してきたことを示している。この結果は、「ラン色細菌から高等植物まで33kDa蛋白の構造は保存されてきた」とするこれまでの考えを大きく修正する必要のある結果と言える。なお、この研究成果は、Plant & Cell Physiologyに投稿し、すでにアクセプトされた。
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