研究概要 |
光合成光化学系II反応中心蛋D2蛋白質に存在する酸化還元活性なチロシン残基(Y_Dチロシン)の機能を知る目的で、Y_Dチロシン残基をフェニルアラニンに置換した部位特異変異株の緑藻Chlamydomonas reinharditiiを用い研究を行った。 平成13年度:閃光照射による微量な酸素発生を測定するために高感度ジョリオ型(微分型)酸素電極の作成を行った。培養細胞を遠心操作等で濃縮することなく、直接閃光照射による酸素発生パターンの測定が可能になった。この電極を用い予備的な実験を行った。また、CP47にヒスチジンタグを導入した変異体株を作成した。 平成14年度:1)高感度ジョリオ型酸素電極により、酸素発生反応S状態遷移過程を調べた。変異体ではS_2→S_1暗減衰過程に速い成分が存在せず、この過程がS_2による還元型Y_Dチロシンの酸化に対応する事が明確に示された。しかし、遅い減衰(S_3→S_2、S_2→S_1)は変異体、野生株間で差が見られず、この過程にはY_Dチロシン残基は関与しないことがわかった。2)野生株、変異体とも長期暗状態後も、閃光酸素発生パターンに変化が見られず、暗所でのS_1からS_0への還元が起こらないことがわかった。暗所でS_1が安定に存在するのはMnクラスター自身の熱力学的な性質によるものであり、Y_Dの関与は無い事が示された。また、長期暗処理中の酸素発生活性の減少は野生株、変異体間で差はなくY_Dは暗状態におけるMnクラスターの安定化には寄与していないと結論した。事実、ヒスチジンタグをつけたY_D欠失変異体より、高い酸素発生活性をもつ光化学系IIコア標品を精製することが出来た。3)ヒスチジンタグを導入したY_D欠失変異体より調製した光化学系IIコア標品は、Y_D酸化の妨害を考えることなく解析可能な格好の材料であると考えられる。この材料を用い、FTIR, ESR測定を行った。
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