アミミドロ遊走子の破砕液を抗原として作製されたモノクローナル抗体のうち、網状群体形成時に遊走子の接着部に局在する分子を認識する抗体を用い、その抗原分子について解析を行った。 1.イムノブロツト解析では、97kDaの分子は遊走子形成初期から群体形成2時間後まで発現していたが、群体形成2日後には検出されなかった。53kDaと30kDaの分子は遊走子形成初期から群体形成直後まで発現し、2時間後には検出されなかった。55kDaの分子は群体形成2時間後のみ、15kDaの分子は群体形成1日後のみに検出された。検出された分子の多くは群体形成時の細胞接着前後に発現していた。 2.抗原分子の細胞内分布の変化を調べた。抗原分子はまず母細胞内の原形質領域分割後の遊走子表面に粒状に分布し、遊走子が動きだすと細胞表面に均一に観察された。遊走子が多面体に形を変えると他の遊走子との接触部分付近に局在しはじめ、やがて遊走子の接着部に局在した。 3.抗原分子と微小管の細胞内での位置関係について共焦点レーザー顕微鏡で解析した。多面体の遊走子では1束の微小管が鞭毛基部から細胞後方へ伸び、細胞が角張った部分より太くなる。抗原分子はこの微小管の束が太くなりはじめた領域に局在した。遊走子の接着直後には太い微小管の束が細胞接着面付近を通り、抗原分子はこの細胞接着面の微小管の束付近に局在した。 4.マウス腹水よりIgGを精製し、母細胞から取り出した遊走子を含む培養液に添加した。コントロールでは約9割が正常な網状群体を形成し、IgG存在下では約7割が細胞接着様式が異常な群体となった。 このように発現や分布様式が遊走子接着のパターン形成との関わる新規の分子の動態が明らかとなった。
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