網状群体形時に遊走子の接着部に局在する細胞接着分子について、免疫電子顕微鏡法により、細胞内局在部位を解析した。包埋後標識法を用いた。形成途中の遊走子では、金粒子はゴルジ体、小胞、原形質膜上に検出された。多面体の遊走子では、金粒子はゴルジ体と細胞全体の原形質膜上に検出された。また遊走子の接触部分に多数の金粒子が見られ、その領域の原形質膜下に配列した微小管の束の近くに分布するものも検出された。群体形成直後には、細胞接着部に多数の金粒子が観察された。この分子はゴルジ体を経由して生合成され、小胞により原形質膜上に運ばれ、遊走子が接触し細胞が接着する時期に細胞接着部に蓄積すると考えられる。 この細胞接着分子の分布と微小管との関わりについて、蛍光抗体染色法により接着分子と微小管を二重染色し解析した。遊走子が動き出す1-2時間前より、培養液中に2X10^<-3>Mのコルヒチンを加えると、遊走子は多面体に変化せず、六角形の網目状に接着しなかった。この処理中、球形の遊走子では短くなった鞭毛は観察されたが、細胞内には微小管はほとんど見られなかった。この遊走子ではこの分子は遊走子表面全体に一様に分布し局在しなかった。形成直後の群体では細胞は不規則に接着し、細胞内には取り込まれた鞭毛に由来する微小管の束が観察された。細胞接着分子はその微小管の束付近に分布した。この分子は細胞内に微小管の束が存在するとそれに近接して局在分布することがわかった。 これらの結果から遊走子の原形質膜下の微小管の束の配列様式により、この細胞接着分子の細胞表面における分布が制御され、この分子が局在することにより細胞の接着位置を決定していると考えられる。
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